あなたの会社でDX推進はどう進める?身近な事例と取り組む際のポイント3点

近年、DX推進という言葉をよく耳にするようになりました。

DX推進に取り組む必要性を感じながらも、具体的に何から始めればよいのか、どのように進めればよいのか、をイメージしづらいと感じている方も多いでしょう。

今回は、DX推進の目的や必要性とあわせて、取り組みやすい身近な事例を紹介します。自社でDX推進に取り組む際のポイントも解説していますので、ぜひ参考にしてください。

  

1)DX推進とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術の活用を通してビジネスモデルや業務プロセスに変革をもたらすことを指します。

ビジネスや業務の仕組みのレベルから根本的に変革することで、競争優位性の確立や企業風土の刷新へとつなげるのです。

DXを提唱したのはウメオ大学のエリック・ストルターマン教授です。2004年に発表した論文でDXという言葉が初めて使われました。

日本においては経済産業省が2018年に「DXレポート」を公表したことにより、DXという概念の認知度が高まったといわれています。

  

DX推進によって成功を収めた事例としてはNetflixが有名です。

ストリーミング技術によって動画配信のビジネスモデルに大きな変革をもたらしただけでなく、ハリウッド級の予算で映画作品を自社制作するなど映画そのもののあり方にも影響を与えつつあります。

日本においても、ユニクロの無人レジは実店舗での事業のあり方を一新した事例として知られています。人件費の削減と購買体験の向上を両立させ、「買い物のあり方」をDXを用いて再定義した成功例といえます。

  

DX推進とIT化は違う?

DX推進と混同されやすい概念の1つに「IT化」が挙げられます。DX推進ではデジタル技術を駆使することが多く、「DX推進=IT化」であると考えている方もいますが、これは間違った理解です。

DX推進とIT化には、根本的な違いがあります。

IT化とは、既存の業務をデジタルデバイスやクラウドサービスなどに置き換えて合理化したり、効率化を図ったりすることを目的とする施策です。

利便性や生産性を高めるうえで役立ちますが、ビジネスそのものの変革を目的としていません。

一方、DX推進はデジタル化に留まらず、業務の仕組みと携わる人、組織の意識・行動を変化させ、成長へと繋げていくことを目指しています。

デジタル技術を駆使することで新たな市場の開拓を実現したり、競争優位性を飛躍的に高めたりすることがDX推進の目的です。

DX推進とIT化の間には、「変革」の有無という決定的な違いがあると捉えてください。

  

2)なぜ企業はDX推進に取り組む必要があるか

近年、DX推進が注目されているのは、多くの企業にとってDX推進が重要な課題となっているからです。

なぜ企業はDX推進に取り組む必要があるのでしょうか。主な理由として、次の3点が挙げられます。

  

インターネット社会の促進による「消費者の行動形態の変化」からの必要性

多くの人がスマートフォンを活用するようになったことで、インターネットに常時接続された機器を誰もが扱うようになりました。スマートフォンの急速な普及は、消費者の行動形態をも大きく変化させたのです。

たとえば、スマートフォンが普及する以前はECサイトと実店舗での買い物は全く別の購買体験と考えられていました。

しかし、現在では実店舗に展示されている商品を手に取って確認し、ECサイトで購入する「ショールーミング」という消費者行動が広まりつつあります。

消費者にとって実店舗とECサイトは分断されておらず、連続した購買体験として捉えられているのです。

このように、消費者の行動形態の変化は企業にDX推進を促す一因となっています。

  

少子高齢化などによる「恒常的な人手不足」からの必要性

ビジネスモデルの変革を望んでおらず、現状を維持したい企業にとってDX推進は不要なのでしょうか。実は、現状の生産性を維持したい企業ほどDX推進に取り組む必要があります。

日本は急速に少子高齢化が進行しており、将来的に労働人口が減少することは確定しています。

労働力が減っていく以上、事業を現状維持するには生産性を高めなければなりません。

人の手で行うべき業務と機械化・自動化が可能な業務を仕分け、貴重な労働力をより生産性の高い業務へと集中投下することが求められているのです。

既存の業務をデジタルシフトするだけでなく、業務フローの無理・無駄を最小限に抑える必要があるでしょう。

恒常的な人手不足はすでに顕在化しており、DX推進による業務変革はあらゆる企業にとって喫緊の課題となりつつあるのです。

  

生産性の向上と企業競争力の向上からの必要性

前述の「DXレポート」には「2025年の崖」という言葉が登場します。

長年活用され続けてきた既存システムが現在もなお稼働しており、多くの業界の基幹システムを支えているのが実情です。

技術の進歩が加速している今、既存システムが足かせとなって大幅な経営変革やビジネスモデルの刷新に踏み切れないケースが多発すると考えられています。

2025年以降、主要な基幹システムのサポート終了やIT人材不足といった複合的な要因が折り重なり、最大で12兆円もの経済損失が生じることが懸念されているのです。

旧来のビジネスモデルや事業運営は、2025年を境に維持していくのが困難になる恐れがあります。

生産性と企業競争力の向上を早期に実現するためにも、DX推進は不可欠な課題として位置づけられているのです。

  

3)DX推進の身近な事例

DX推進に取り組みたいと思いながらも、大規模なシステムの改修や導入はハードルが高いと感じている方もいると思います。

実は、DX推進は身近なところから取り組むことも可能です。DX推進に向けた第一歩として、まずは次のような身近な取り組みから始めてみてはいかがでしょうか。

  • 紙媒体・アナログ業務のデジタル化
  • 業務のクラウド・DB化(CRMやクラウド会計ソフト等)
  • AI・RPA技術の導入

  

紙媒体や身近な業務のデジタル化

DX推進において、デジタルツールの活用が重要な通過点となるのは間違いありません。

従来の業務をデジタル化することによって、業務効率化や生産性の向上を図るのもDX推進の第一歩といえるでしょう。一例として、次のようなデジタル化の施策が想定できます。

  • 文書のペーパーレス化、脱ハンコ化
  • ワークフローの見える化
  • チャットやビデオ通話の導入によるテレワークの実現

紙媒体や身近な業務をデジタル化することが、業務全体のフローの見直しや整理のきっかけになる場合があります。

身近なところから業務のデジタル化を推進することによって、デジタルツールを有効活用できるリテラシーを高める効果も期待できます。

DX推進と聞くと、難しいイメージがある印象かもしれませんが、身近な業務の中にも簡単にデジタル化を進められる分野は数多くあります。身近、簡単なところから取り組み、DXに対するポジティブなイメージを社内に醸成していきましょう。

  

業務のクラウド・DB化(CRMやクラウド会計ソフト等)

業務のクラウド化・DB化を推進することも、DX推進において重要なプロセスです。

顧客管理をCRMツールへと移行することや、会計帳簿をクラウド会計ソフトで管理することなどが挙げられます。

たとえば、顧客管理台帳をCRMツールへと移行することで得られるメリットは業務の効率化だけではありません。

顧客の消費傾向や購買行動に合わせて広告を打てるようになったり、顧客が求める情報をタイムリーに届けやすくなったりする側面もあります。

身近な課題として業務改善に取り組むのはもちろん必要なことですが、その先に顧客体験の向上という大きな目的があることを見落とさないようにしてください。

  

AI・RPA・IoT等の技術の導入

AIやRPA、IoTといった技術の導入も、DX推進を後押しする材料となり得ます。

業務効率化を実現するだけでなく、顧客やユーザーの利便性を高める効果を発揮しているケースとして、下記の事例をイメージするとよいでしょう。

  

活用されている場面活用例主なメリット
カスタマーセンターAI音声による自動応答・電話オペレーターの人員を削減できる ・24時間受付可能となる
コインパーキング画像認識による自動化・無人化が可能となり係員の削減につながる ・リアルタイムで満空車管理が可能となる
店舗無人レジによる省力化・店員の負担軽減と人員削減につながる ・購買データの分析にも役立つ
製造ライン画像処理による品質検査の自動化・検査担当者の負担軽減につながる ・検査品質の均一化を図ることができる

  

このように、DXに活用可能な技術は非常に幅広く、さまざまな応用が想定できます。最新技術といっても決して難しいものではなく、暮らしに直結する技術として身近なところで活用することができます。

  

4)私たちの会社でDX推進に取り組む際のポイント3点

これから自社でDX推進に取り組むなら、ここを留意してほしいというポイントをまとめました。DX推進を効果的なものにするためにも、次の点を押さえて取り組んでいきましょう。

  • 「きっちり計画立て」より「スモールステップ・都度の軌道修正」のスタートが〇
  • 「課題を持てる人」と「技術を知っている人」を掛け合わせる
  • 全社員への意識を高める・状況に応じてDX推進の組織体制化を行う

  

「きっちり計画立て」より「スモールステップ・都度の軌道修正」のスタートが〇

DX推進はビジネスモデルそのものの変革を目指す試みのため、取り組み初める際に「壮大すぎる計画」や「緻密すぎる計画」を立ててしまいがちです。

実際にDX推進に着手すると、さまざまな障壁が表面化します。計画通りに進まない、ということもめずらしくありません。

臨機応変に軌道修正できるよう、DX推進計画はスモールステップで取り組み、進捗状況や効果測定の結果に応じて変更できる余地を残しておきましょう。

たとえば、いきなり「全社実施」ではなく、「一部の部署で実験的に導入してから徐々に広げてゆく」などの方法だと、失敗しても影響を抑えることができます。

  

「課題を持てる人」と「技術を知っている人」を掛け合わせる

DX推進では技術面に耳目が集まりがちですが、DX推進に必要な人材は技術者だけではありません。

DX推進の本来の目的は「業務の仕組み・関わる人・組織の意識・行動を変化させ、成長へとつなげていく」ことです。業務や組織に対する課題意識や問題提起こそがDX推進の原点といえます。

解決すべき自社の課題や目指すべき組織像を十分に把握している人の存在が、DX推進において欠かせないのです。

一方、課題意識さえ明確であれば必ず成功するとも限りません。課題を解決するための施策を実際の計画に落とし込んでいく際には、DX推進に関わる技術的な知識・ノウハウが必要になります。

情報処理推進機構(IPA)は、DXを推進する人材として以下の6職種を上げています。

  

職種主な役割
プロデューサーDXやデジタルビジネスの実現を主導する。
ビジネスデザイナーDXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う。
システムアーキテクトDXやデジタルビジネスに関するシステムを設計する。
データサイエンティスト/AIエンジニアDXに関するデータ解析を行う。
エンジニア/プログラマデジタルシステムの実装やインフラ構築を行う。
UXデザイナーDXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを行う。

  

DX推進の当初から、この6職種すべてが必要になることはないでしょう。

しかし「こんな技術を実現できていたら」というような課題が明確にある場合、その課題解決に役立つ役割の人がいればとても心強く感じるはずです。

このように「課題を持てる人」と「技術を知っている人」を掛け合わせることが、DX推進を適切な方向へと導く上で重要なポイントとなるのです。

  

全社員への意識を高める・状況に応じてDX推進の組織体制化を行う

DX推進は、一部の部署や社員だけが取り組むべき施策ではありません。

全社で同じ方向を目指して推進することで、はじめて成功への道筋が見えてくる施策といえます

たとえば、顧客体験の向上を目指した新しいCRMツールを導入しても、実際にツールを活用する現場メンバーが「入力の手間が増えた」「以前のやり方のほうが慣れている」といった意識のままではDX推進の成功率が下がってしまうでしょう。

ツールさえ導入すればうまくいくわけではありません。先に、導入・活用する目的を丁寧に説明し、共通目標を共有し、現場メンバーの意識を高めることが重要です。

また、DX推進を担う組織体制を築いていくことも欠かせません。

各部門にDX推進チームを置くなど、司令塔となる専門組織を設置するのが理想です。部門間でDX推進チームが連携を図り、DX推進を全社的な動きにしていく事がポイントです。

  

まとめ)DX推進は「取り組みやすさ」と「目的意識」のバランスを大切に

業種を問わず、多くの企業にとってDX推進は重要な経営課題の1つとなっています。

取り組みやすい施策から試みることでDX推進への気運を高めていくことは、2025年の崖に備えるためにも必要な対策といえるでしょう。

一方で、DX推進とIT化は異なる概念であり、誤った認識をしてしまうと目指すべきゴールが大きくずれてしまう可能性があります。それらの概念を混同しないよう注意しましょう。

DX推進に取り組む際には、ぜひ「取り組みやすさ」と「目的意識」のバランスを意識してください。DX推進により、身近な業務課題が解決したという具体的な実績ができれば、取り組みに対し意欲的な社員も増えていくはずです。

  

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この記事を読んで、DX推進をすすめたい!と感じても「まずはどこから始めればいいのか分からない」という場合は、取り組みやすい分野から始めましょう。それにはまず、社員の日常業務を観察するとよいでしょう。そこが、DXを推進できるポイントであることが多いからです。

たとえば「業務コミュニケーションに想定より多くの時間を割いている」という場合は、業務コミュニケーションのDX推進から着手するということです。

とくに在宅勤務や外回りの社員の多い職場では、「どこでもホン」のようなスマホ対応のビジネスホンの導入を検討すると良いかもしれません。

  

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