「NFTという言葉を最近よく聞くものの、実はどういうものなのかがよく分からない」
「自社の事業にとってNFTは関わりがあるのか、事業にどう組み込めるのかを知りたい」
このように感じたことはありませんか?
今回は、NFTの概要や注目されている理由、今後活性化が見込まれる分野について解説します。実際にNFTを取引する方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
1)そもそも、NFTとは何か
NFTとはNon-Fungible Tokenの略で、和訳すると「代替不可能なトークン」という意味になります。
トークンの直訳は「しるし・証拠」。デジタルデータにおいて意味を持つ、最小単位の文字の並びのことをいいます。
従来、デジタルデータはいくらでも複製できることから、データそのもののオリジナル性や限定性の価値を担保できないと考えられてきました。
宝石や名画といった希少性の高いモノは、他のモノでは置き換えられないからこそ価値が認められています。これに対してデジタルデータは、オリジナルデータとコピーデータを区別する手段がありませんでした。
この問題を解決したのがNFTです。NFTを活用することで識別番号や制作年月日を証明できるだけでなく、誰の手をわたってきたデータなのか、履歴として残せます。
デジタルデータであっても代替不可能な、唯一無二のコンテンツであることを証明し、著作権などの権利を保護できるようになったのです。
現在NFTの技術が活用されている主なジャンル
- デジタルアート
- オンラインゲーム
- 音楽
- アニメ・漫画作品
- トレーディングカード
- メタバース(仮想空間)上の土地・建物やアイテム
NFTはデジタルアートに留まらず、すでにさまざまなジャンルで広く活用されつつあります。
オンラインゲーム上で獲得したアイテムはゲーム内通貨の域を超えて、日本円に換金可能な価値を持つことができます。
ゲームをプレイしながら現実の世界で収入を得ることも可能で、実際にNFTゲームを半年間プレイして3,500万円の収入を手にしたプレイヤーも存在します。
同様のことは、音楽やアニメ・漫画作品、トレーディングカードといったあらゆるコンテンツに当てはまります。データそのものに価値が付与されているため、イーサリアムなどの暗号資産で決済し、個人間で売買できるようになったのです。
こうした仕組みは、メタバース上の土地や建物の売買にも利用されています。仮想空間に建設された建物が、現実世界で建物を売却・購入するのと同じように取引されているのです。
2)NFTが注目される理由
NFTが注目されている大きな理由の1つに「成長性」が挙げられます。
世界のNFT市場は、2022年から2027年までの5年間で毎年35%の成長が見込まれており、2027年には市場規模が136億ドルに達すると予想されているのです。
参照:株式会社グローバルインフォメーション「NFT(非代替性トークン)の世界市場:提供サービス(事業戦略策定、NFT作成・管理、NFTプラットフォーム – マーケットプレイス)、エンドユーザー(メディア・娯楽、ゲーム)、地域別 – 2027年までの予測」
前述の通り、NFTはすでにさまざまな分野で活用されてきているとはいえ、現状ではデジタルコンテンツの取引が主な用途となっています。
しかし、近い将来NFTはいっそう広い用途で使われるようになり、私たちの生活の中で身近な存在となっていくでしょう。
例えば、不正転売が問題視されているコンサートチケットに関しても、eチケットでNFT技術を活用すれば「誰が誰に販売したか」が記録されるため、高い透明性を確保できるのです。
このように、すでに市場規模が大きく拡大していること、今後さらに実用化される分野が数多く見込まれていることが、NFTが注目を集めている理由といえます。
NFTの活性が見込まれる分野とは?
今後NFTの活性化が最も見込まれているのはメディア&エンターテイメント分野です。
誰もがクリエイターとして作品を公表し、唯一無二のオリジナルとして取引できる可能性を秘めています。
これにより、「コンテンツを供給する側と消費する側」の壁は限りなく低くなっていき、コンテンツの民主化が急速に進むともいわれています。
あらゆる画像・動画・音声といったデジタルデータが、個人間で取引される時代がやってくるかもしれません。
また、現在すでに注目が集まっているNFTを活用したオンラインゲームとその関連商品についても、今後ますます市場が活性化していくことが見込まれます。
メディア&エンターテイメントとオンラインゲームは、NFTの2大市場として押さえておくとよいでしょう。
参照:FinTech Journal「【世界調査レポート】NFT市場規模の今後を予測、5年で4倍の約2兆円に急拡大できるワケ」
3)NFTの活性が見込まれる分野と、具体的なサービス
今後NFTの活性化が見込まれる分野と、それぞれの分野における具体的なサービスを紹介します。NFTの技術によって各分野にどのような変革がもたらされるのか、イメージをより鮮明にしていきましょう。
メディア・エンターテイメント業界
メディア分野においては、NFTによってデジタル著作物の権利保護が可能となり、著作権侵害に関する問題の解消が期待されています。
データの改ざん防止や所有証明が容易になることで、海賊版流通の防止などの知財保護が可能になるからです。仮にコンテンツが転売されたとしても、原作者が利益を得られる仕組みを確立できます。
また、エンターテイメント分野に関しては、NFTを活用したクリエイターエコノミーの発展が見込まれています。
誰でも自分が制作した作品をマネタイズできるようになり、供給者と受給者の垣根が無い、新たな経済活動が確立されていくでしょう。
このほかユーザー参加型のビジネスとして、オーディエンスが直接課金できるサービスが多数台頭していくことも予測されています。
メディア・エンターテインメント業界における、現在のNFTの働きかけ
メディア・エンターテイメント分野では、すでにNFTの実用化・商品化が進んでいます。
NFTがメディアのあり方を大きく変える顕著な例が映画です。従来、映画は配給会社などの仲介業者を経由しなければ公開できませんでした。
一方、NFTを活用すれば、販売方法を自由に選べるうえに、二次流通の場合でも作品の権利者に収益がもたらされる仕組みを確立できます。
例えば今後、限られた予算で制作された映画作品が、NFTを活用した市場で取引されていく事も考えられます。
エンターテイメント分野では、NFT技術を活用した新たなアート表現も台頭しています。
一例として、音楽ユニットPerfumeがパフォーマンスで使用した3DデータをNFTアート作品化した「Imaginary Museum “Time Warp” – Reconstruction」は大きな話題を呼びました。
データそのものに独自の価値を付加できるNFTだからこそ実現したアート作品の好例といえるでしょう。
このように、メディア・エンターテイメント分野におけるNFTの活用は、遠い未来の話ではなくすでに実現化しつつある現在進行形の事業なのです。
オンラインゲーム業界
オンラインゲーム業界においても、NFTの活用はすでに始まっています。NFT技術の活用により、従来は困難だった下記のような商品・サービスを提供できるようになったからです。
- 自分だけのキャラやアイテムを創り資産として保有・売却する
- 現実世界の通貨に換金可能な収益をゲーム内で得る(Play to Earn)
- ゲームで入手したアイテムをサービス終了後も資産として保有する
従来、ゲームを楽しむにはソフトの購入やアイテムへの課金が必要だったように、プレイヤーは専ら消費者として位置付けられていました。
一方、NFTゲームではプレイヤー自らが資産を保有し、ゲーム外の世界でも利用できる現実の通貨を得られるようになったのです。
オンラインゲーム業界における、現在のNFTの働きかけ
オンラインゲームでNFTが活用されている事例として、海外ゲーム「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」と国内ゲーム「Crypto Spells(クリプト・スペルズ)」を紹介します。
The Sandbox
The Sandboxはバーチャル空間「メタバース」内でオリジナルキャラクターやアイテムを生成できる箱庭ゲームです。
プレイヤーはメタバース内の土地にあたるLANDを所有し、現実世界の土地と同様に貸し出して不動産収入を得ることも可能。プレイヤー数の増加に伴ってLANDの取引価格も上昇していく仕組みになっています。
Crypto Spells
Crypto SpellsはNFT技術を活用したデジタルカードゲーム。入手したカードをゲーム内のマーケットで販売できるだけでなく、ゲーム外のマーケットで暗号資産や日本円に換金することも可能です。
また、ゲーム内の大会で獲得した賞品にも資産価値があるため、ゲーム内外を問わず売買できます。実際、プレイヤーの中には月数万円ペースで収入を得ている人もすでに現れています。
小売業界
物理的なモノを販売する小売業界においても、NFTは実用化されつつあります。NFTが活用されている主なケースは次の2通りです。
- 限定商品や獲得ポイントのNFT証明書を発行する
- デジタル世界で活用できるアバターなどを提供する
例えば、限定商品が本物かどうかは、従来はシリアルナンバーなどで確認するしか方法がありませんでした。
NFTを利用すれば、改ざん不可能な信頼性の高いデジタル証明書を発行できます。これにより、限定商品の希少性・限定性をいっそう高められるのです。
デジタル世界でのNFT活用例として、ぬいぐるみのキャラクターのデジタル版をNFTで所有する事などが想定できます。
「モノを所有する」体験が、現実世界に限らず、仮想世界にも広がっていく可能性を秘めています。
小売業界における、現在のNFTの働きかけ
小売業界でNFTが実用化されている事例として、ナイキとサッポロビールの取り組みを紹介します。
ナイキ NFTスニーカーコレクション
ナイキではNFTスニーカーコレクションを販売しており、仮想スニーカーを実際に購入・保有することができます。
仮想スニーカーはデジタルデータのため、動きのあるデザインやスキンの変更が可能。スキンを購入してシューズのイメージを変えることができます。
バーチャル空間で履くことで、ファッションの新たな概念を築きつつあります。
サッポロビールのブランドトークン
サッポロビールは独自のブランドトークンを発行しています。ブランドトークンは従来のポイントと同様に割引が適用されるほか、ユーザー間でギフトの交換も可能。
ブランドトークンを保有するユーザー同士のコミュニティを拡大していくことで、ブランドに対するエンゲージメントを高める効果が期待されています。
このように、小売業界においても商品の付加価値をいっそう高めるための施策として、NFTの活用が進んでいます。
4)実際にNFTの取引をする方法
NFTの取引をするために必要な手順について見ていきましょう。始め方自体は複雑なものではなく、次の3ステップに沿って進めればNFTの取引を開始できます。
- 仮想通貨取引所で口座を開設する
- ウォレットの作成と入金
- NFTマーケットでNFTコンテンツを購入
①仮想通貨取引所で口座を開設する
NFTの多くは暗号資産(ETH:イーサリアム)で取引されています。
よってNFTの取引には、暗号通貨が必要となります。暗号通貨を保有するには、仮想通貨取引所に口座を開設する必要があります。
口座の開設手続きは一般的な銀行などの口座開設と大きな違いはありません。次の書類を手元に用意し、口座開設手続きを進めましょう。
暗号資産の口座開設に必要な書類の例
- 身分証明書(運転免許証やパスポートなど)
- 現住所の分かる書類
- 電話番号
- メールアドレス
- IDセルフィー(身分証明書を手にした状態の自撮り写真)
- 各種同意書
スマートフォンで必要書類の提出から本人確認までが完結するので、窓口などへ足を運ぶ必要はありません。早ければ口座を即日開設できます。
②ウォレットの作成と入金
口座を開設後、NFTの取引をするためのウォレット(暗号資産専用の財布)を作成しましょう。
NFTの取引に使用するウォレットとして、イーサリアムに対応しているMetaMaskを利用する人が多いです。
参照:MetaMask
MetaMaskはイーサリアムそのものだけでなく、イーサリアムを利用しているNFTの保管や送受信ができるため、NFTの取引には使い勝手がよいでしょう。
続いて、仮想通貨取引所で購入した暗号資産を、作成したウォレットに入金します。暗号資産の価値は短期間で大きく変動することも珍しくないため、購入するタイミングによって価格が異なる点に注意してください。
③NFTマーケットでNFTコンテンツを購入
最後にNFTマーケットに会員登録し、NFTコンテンツを購入するための準備をしましょう。
NFTマーケットによっては会員登録が不要で、ウォレットと接続するだけでNFTコンテンツを購入できるケースもあります。
また、Coincheck NFT(β版)のようにNFT専用ウォレットを備えたサービスを利用すれば、取引所から直接NFTを購入することもできます。
国内の主なNFTマーケット
- Coincheck NFT(β版)
- LINE NFT
- Adam by GMO
- SBINFT
- HEXA
- PlayMining NFT
- 楽天NFT
上記の通り、国内の主要なNFTマーケットだけでも複数のサービスが台頭しています。
仮想通貨取引所での口座開設・ウォレットへの入金・NFTマーケットとの接続の3点が完了していれば、一般的なネットショッピングと同じ感覚でいつでもNFTコンテンツを購入できるのです。
まとめ)大きな発展が見込まれるNFTを事業に取り入れよう
今回解説してきた通り、NFTは今後大きな発展が見込まれている技術の1つです。アートやエンターテイメントといった分野に留まらず、近い将来ますます多くの業界でNFTが活用されていくでしょう。
本記事で紹介した事例を参考に、ぜひNFTを事業に取り入れることも検討してみてください。 事業の中でNFTが重要な位置を占めるようになるのは、そう遠くない未来のことかもしれません。