クラウドPBXは、新しいビジネス用の電話の仕組みです。
スマホで会社の電話番号を使って発着信できるなど、これまでにない利点があります。
一方、クラウドPBXに切り替えた事により、これまでの電話の利便性が損なわれるケースもあります。
今回は、クラウドPBXの導入で失敗するケースと、クラウドPBXをおすすめできる会社とおすすめできない会社を解説します。
1)クラウドPBXの導入で失敗する主なケース5つとその対策
ここでは、クラウドPBXを導入して失敗するケースや、導入できなかったケースについて5つ紹介します。
これまでの電話番号が利用できない
- クラウドPBXに移行しようとしたが、電話番号が変わるといわれた
- クラウドPBXに移行して電話番号が変わり、取引先とお客様への通知や、名刺、封筒等の印刷物の刷り直しが必要になった
「現在の電話番号を変えたくない」方は、導入に注意が必要です。
携帯電話と同様に、固定電話でも「番号ポータビリティ」という仕組みがあり、電話サービスの事業者を変更しても、これまでの電話番号を継続して利用し続けることができます。
ただしクラウドPBXに移行する際に番号ポータビリティを利用するためには、次の2つの条件を満たす必要があります。
- 現在利用している固定電話サービスの事業者が、番号ポータビリティに対応していること
- 移行する予定のクラウドPBXの事業者が、番号ポータビリティに対応していること
両方の事業者とも番号ポータビリティに対応していない場合は、これまでの電話番号を利用することができません。
クラウドPBXの事業者によって、番号ポータビリティの対応は次の3つに分類されます。
- 電話番号の引き継ぎに対応していない
- 電話番号の引き継ぎに対応しているが地域が限定されている(東京03と大阪06のみなど)
- 全国の電話番号の引継ぎに対応している
いまの電話番号を変えたくない場合は、予めご利用中の電話事業者と、移行する予定のクラウドPBXの事業者の双方に、番号ポータビリティの対応を確認しておくことが大切です。
これまでの電話機が利用できない
- クラウドPBXに移行して、今までの電話機が使えなくなった
- クラウドPBXに移行しようとしたが、新しく電話機を購入しなければならず、断念した
クラウドPBXで利用できる電話機は、主に3つの種類に限定されています。
- SIP電話機
- PC
- スマホ
それ以外の電話機は、クラウドPBXで利用することはできません。
また、クラウドPBXの事業者ごとに、利用できるSIP電話機の機種、スマホの機種とOS、ソフトフォンをインストールするPCのOSやスペックに条件がありますので、予め確認する必要があります。
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コスト削減につながらない
- クラウドPBXに移行して、月額利用料金が高くなった
- クラウドPBXに移行しようとしたが、長期的にはトータルコストが上がるため、断念した
クラウドPBXは初期費用を抑えられる一方で、基本利用料などの月額費用が発生します。
使用したい機能やユーザー数により、長期的には、コスト増となることもあります。
- クラウドPBXの事業者から見積りを取る
- 電話機は新規に購入するのではなく、社有のPCやスマホを活用する
このような方法で、コストを抑えてクラウドPBXを導入することが可能になります。
通話品質・音質が下がってしまった
- クラウドPBXに移行したが、スマホで利用する際の通話品質が悪く、解約した
- クラウドPBXに移行しようとしたが、通話が途切れやノイズが入ることを聞き、断念した
クラウドPBXでは、電話にインターネット回線を利用するため、通話品質が通信環境によって大きく左右されます。
ビジネスホン | クラウドPBX | |
---|---|---|
電話機の配線 | ・置き型電話機:電話用ケーブル ・コードレス電話機:電話用近距離電波 | ・置き型SIP電話機:LANケーブル ・スマホ:Wi-Fi、4G/5G/LTE |
とくに配線にWi-Fiを利用する場合は注意が必要です。Wi-Fiでは、他の電波による干渉やアクセスポイントの機種や台数、壁などの物理的な障壁の有無、利用の混雑などの理由で、利用する位置や時間帯により大きく速度が変わります。
また、オフィス内で移動しながら電話をしている途中、Wi-Fiのアクセスポイントが切り替わると、通話が切れるため、注意が必要です。
FAXが使用できない
- クラウドPBXに移行したが、インターネットFAXに慣れずに戸惑った
- クラウドPBXに移行しようとしたが、FAXが欠かせない仕事であるため、断念した
クラウドPBXでは、ビジネスホンのようにオフィスに主装置を設置する事はありません。
そのため、FAXや受付電話機、ドアホン、放送スピーカー、留守電専用機器など、これまで主装置に接続していた電話設備は利用できません。
特にFAXの扱いには注意が必要です。
FAXを使っている会社では、クラウドPBXに移行する際、次のいずれかを選択しなければなりません。
- FAXを廃止する
- インターネットFAXに移行する
- FAX用に固定電話回線を残す
いずれの方法も、デメリットが伴います。
FAXを廃止した場合は、取引先と新たに代替する通信手段を調整する必要があります。
インターネットFAXに移行すると、これまでのFAX番号は変更されます。
また、「紙で印刷されない」「受信のアラートがメールになる」等、これまでのFAXと大きく使い勝手が異なってきます。
FAX用にこれまでの固定電話回線を残しておけば、FAX機もFAX番号も継続して利用でき、利便性が損なわれる事はありませんが、他の方法に比べると、FAX専用の固定回線のコストが、クラウドPBXの利用料と並行して発生する事になります。
2)クラウドPBXをおすすめできる会社とおすすめできない会社
クラウドPBXをおすすめできる会社と、一方でおすすめできない会社の具体的な状況を解説します。
クラウドPBXをおすすめできる会社
- テレワークを導入する会社 または実施中の会社
- 新規に会社の電話環境を構築する会社で、初期費用を抑えたい場合
- 新規に電話回線を調達する会社 または固定電話の番号の変更が業務への影響が小さい会社
テレワークを導入する会社 または実施中の会社
テレワークを導入する会社や既に実施中の会社には、スマホから会社の電話番号で発着信できるクラウドPBXがおすすめです。
クラウドPBXの仕組みは、テレワークでもオフィスと同様の電話対応が可能となります。
新規に会社の電話環境を構築する会社で、初期費用を抑えたい場合
電話環境を新たに構築する場合は、クラウドPBXは有効な選択肢になります。
主装置や電話機を新たに購入する必要がなく、社有のスマホを電話機として用いる事ができます。
新規に電話回線を調達する会社 または固定電話の番号の変更が業務に与える影響が低い会社
新規に電話回線を調達する会社では、1本のインターネット回線で複数の同時通話ができるクラウドPBXは、費用面で強くおすすめできます。
また固定電話の番号の変更が業務に与える影響が低い会社、たとえば連絡業務を主にメールやチャットなどWEBツールと携帯電話で行っている会社にも、クラウドPBXはおすすめです。番号の変更を上回るクラウドPBXのメリットを得ることができます。
クラウドPBXの導入をおすすめできない会社
- 現在の電話番号を引き続き利用したい会社
- FAX、ドアホン、受付電話機をビジネスホンと接続して利用している会社
現在の電話番号を引き続き利用したい会社
現在の電話番号を引き続き利用したい会社では、クラウドPBXの導入にあたって十分に注意を払い、番号ポータビリティに対応するタイプを選択してください。
こうした会社ではクラウドPBXに替り、現在の電話番号をスマホで受信できる「スマホ内線PBX」が選択肢に上がります。
FAX、ドアホン、受付電話機をビジネスホンと接続して利用している会社
クラウドPBXでは、FAXやドアホン、受付電話機等、これまでビジネスホンの主装置に接続していた機器を利用できる仕組みはありません。
これらの機器と類似の機能を提供する、他のクラウドサービスと連携して補う方法はありますが、追加でコストが発生する上、使い勝手が大きく変わってきます。
クラウドPBXの導入を検討する際は、いま使っている電話機以外の通信設備にも十分注意を払ってください。
3)「クラウドPBXは難しいかも…」と思ったときはスマホ内線PBXがおすすめ
「クラウドPBXの自社導入は難しいかも・・・」けれども「会社電話のスマホ化は取り組みたい」という場合は「スマホ内線PBX」も検討してみましょう。
スマホ内線PBXは、ビジネスホンと同様に使うことができる上、カンタンにスマホを内線化できる電話システムです。
スマホ内線PBXの機能・特徴と、おすすめのスマホ内線PBXサービスについて見ていきましょう。
スマホ内線PBXの機能・特徴
スマホ内線PBXの代表的な機能・特徴は次の4点です。
スマホを会社電話として使える
固定電話と同様に、スマホも主装置を介して通信するため、ビジネスホンとの電話機として利用できます。外出先や自宅でも、スマホで会社の電話番号を使った発着信が可能です。
スマホで内線通話ができる
外出先や自宅でも、スマホを使ってオフィス内と同じ感覚で内線通話ができます。
これまでの電話番号を継続して利用できる
これまでの電話番号と電話回線を継続して利用できます。
FAX・ドアホン・受付電話機と接続が可能
オフィスに設置する主装置を用いるため、いま使っているFAXや受付電話機も接続できます。
おすすめのスマホ内線PBXサービス
どこでもホン
どこでもホンは20,000台を超える導入実績を持ち、月額7,900円から始められるサブスクモデルのスマホ内線PBXです。
スマホによる通信は、4G/5G/LTE方式を用いるため、Wi-Fiよりも安定した通話品質を実現。
電話番号と電話回線は変わらず使う事ができ、ご利用中のFAXや受付電話機も接続可能です。
「できる限り今の通信環境の利便性を損ないたくない」会社におすすめです。
スマホにインストールする専用アプリは無料、またスマホの接続は最大10台まで追加料金不要、初期費用は50,000円~で導入できます。低コストでシンプルなスマホ内線化を望む企業におすすめです。
MOT/PBX
MOT/PBXは、27,000社以上の導入実績を持つスマホ内線PBXです。
主装置は電話機の台数に応じたラインアップを揃えており、スマホ内線化に加えCRMツールとの連携など、豊富な機能を備えています。
導入はリースもしくは一括購入に限られますが、電話を多くの用途に用いる企業に、おすすめのスマホ内線PBXです。
まとめ)クラウドPBXはリスクやデメリットを押さえたうえで導入の検討を
クラウドPBXは、スマホもビジネスシーンで大きく活用できる、新しい電話の仕組みです。
ただし従来のビジネスホンと比べてカバーしていない機能も多く、導入にあたっては、自社の電話の用途と、それに必要な条件と不要な条件を十分に検討する必要があります。
この記事をご参考いただき、失敗のないクラウドPBXの導入をご検討ください。