ビジネスホンの導入や入れ替えを検討中の企業にとって、「クラウドPBX」は選択肢の一つです。
また導入を検討する前に、費用の相場がどの程度になるのか把握しておきたいと考えている方も、多いのではないでしょうか。
クラウドPBXの費用・料金は、導入する環境や電話の使い方によって異なります。
そこで、今回はケース別にクラウドPBXの初期費用や月額費用の相場を紹介していきます。料金をできるだけ安く抑えるためのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
1)クラウドPBXの費用・料金は使い方・環境によって大きく変わる
クラウドPBXを導入する際にまず理解しておきたいのが、導入時の条件や電話の使い方によって費用が変わるという点です。
現状どのようにビジネスホンを利用しているか、今後どのように使っていく予定であるかに応じて、ケース別にポイントを押さえていきましょう。
①これまでの電話番号を変えずに利用したいか
従来は固定電話(03・06などの市外局番を使用した電話番号)を利用していた方で、電話番号を変えずにクラウドPBXへと移行する場合は、概ね以下の費用が発生します。
- ゲートウェイ機器の費用(1台につきおおよそ10万円程度)
- 設置工事費(1~2万円)
ゲートウェイはアナログ電話網とIP電話網を繋ぐ役割を果たします。
オフィスや店舗内にゲートウェイを設置し、電話を転送することで元の電話番号を利用することが可能です。
ただし、ゲートウェイを使用した電話回線の共有(外線の共有や内線連絡)は操作が複雑になりやすく、販売店によっては推奨していないケースも見られます。
②すでにビジネスホンやPBXを使用しているか
現在ビジネスホンやPBXを利用しており、クラウドPBXへの移行を検討しているケースが該当します。
この場合、ポイントとなるのは「クラウドPBXは通常のビジネスホンと併用できない」という点です。
クラウドPBXに移行するのであれば、これまで利用してきたビジネスホンやPBXの撤去作業が必要になります。
撤去費用は依頼する業者や配線のタイプによって異なりますが、一般的な費用の目安は主装置1台につき2,000〜5,000円、電話機1台につき1,000円程度です。撤去する機器の台数によっては、相当の費用がかかる可能性があります。
また、既存のビジネスホンがリース契約の場合、解約するにあたってはリースの残期間分の料金が一括払いとなる場合があります。
③利用者数・同時通話数・電話番号数はどのくらいか
クラウドPBXで電話を利用する人数・同時通話数・電話番号数によっても費用は変動します。
一般的に、アカウント数(ユーザー数)に比例して料金は上がっていきます。
初期費用および月額費用の目安は下表のとおりです。
費用項目 | 費用相場 |
---|---|
初期費用 | 1万円~10万円 別途、固定電話機購入時に2万円~3万円/1台 |
月額費用 | 基本利用料:3,000円~+1アカウント(ユーザー)につき500~1,000円 通話チャネル(同時通話数):1チャネルあたり0円~1,000円 電話番号数:1番号あたり0円~1,500円程度 オプション:各種機能につき1,000円~2,000円 |
とくに月額費用はランニングコストとなるため、必要なアカウント数や通話チャネル数、電話番号数を事前に把握しておく必要があります。
将来的に社員数や事業所が増えていくことも見据え、中長期的な視点でランニングコストを試算しておくことが大切です。
④社内システムとの連携を行うか
クラウドPBXは大きく2つのジャンルに分けることができます。
一般的な電話利用を想定したスタンダードな機能を備えたものと、CTI(コンピュータと電話を統合して相互の機能を作用しあえる機能)を備えたものです。
CTIを用いて社内システムと連携させたい場合は、初期費用・月額費用ともに高額になる傾向があります。
CTIを利用することで、一例として次に挙げる機能が実現可能です。
- 通話内容の自動文字起こし
- CRMシステムと連携し、通話中に顧客情報をポップアップ表示
- 通話の自動録音
- 着信履歴のリスト化
- 着信の自動振り分け
これら機能についてとくに必要性を感じられないようでしたら、費用面でリーズナブルのスタンダードなクラウドPBXを選ぶほうがよいでしょう。
以降の章では、スタンダートなクラウドPBXを中心に説明していきます。
2)ケース別のクラウドPBXの費用・料金相場
続いては、クラウドPBXを導入するオフィス環境ごとに、初期費用・月額費用の相場を見ていきましょう。
3つのケースを紹介しますので、自社の状況に最も近いものを参照してください。
- ケース1:5名規模のオフィス・店舗にクラウドPBXを導入する
- ケース2:30名規模のオフィス・店舗にクラウドPBXを導入する
- ケース3:80名規模のオフィスにクラウドPBXを導入する
ケース1:5名規模のオフィス・店舗にクラウドPBXを導入する
費用項目 | 料金相場(5ユーザーで算出) |
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初期費用 | 0円~5万円 別途、固定電話機購入時に約2万円~3万円/1台 これまでの電話番号を使う場合は別途ゲートウェイ導入等の初期費用が発生します |
月額費用 | 5,000円~2万円程度 通話料は別途発生 |
5名規模の小規模オフィスや店舗の場合、初期費用の料金層は0円〜5万円です。
また固定電話機の購入1台につき2〜3万円の費用が発生します。
また、サービス利用のための月額費用は5,000円〜2万円程度です。
注意点として、これまで使用していた電話番号を引き続きクラウドPBXで使用したい場合、ゲートウェイを導入する必要があります。また、クラウドPBXによってはゲートウェイが接続できないものもあります。その場合は、これまでの電話番号は引き続き使うことはできません。
ゲートウェイ本体と設置工事にはおおよそ10万円~20万円の費用がかかります。見積を十分に確認した上で導入するべきか判断しましょう。
また、月々の通話料は別途発生しますので、月額費用に通話料を加えたコストを想定しておく必要があります。
固定電話機を使わない「スマホ内線PBX」という選択肢
どこでもホン|これまでの電話番号が使えるスマホ内線化サービス
「これまでの電話番号を使い続けたい」なら、スマホ内線PBXの「どこでもホン」という選択肢もあります。
どこでもホンは既存の環境を大きく変えずに、スマホ内線化を実現できるサービスです。代表番号を変えずにスマホ化できるのはもちろん、FAX・受付電話機も今まで通りご利用になれます。
サブスクモデルのため、月額費用は7,900円~と低価格で、ゲートウェイ機器費用も月額料金に込み。費用をかけずにスマホ内線化を実現させたい企業にお勧めです。
まとめてクラウドPBX|初期費用0円で済ませたい人に
まとめてクラウドPBXの大きな特徴は、初期費用0円で導入できる点です。
ビジネスに必要とされる基本的な電話機能がプリセットされた状態で固定IP電話とスマートフォンを使う事ができます。
月額費用は電話番号6本分・5回線まで4,800円で、1回線追加するごとに980円のオプション料金が必要です。
電話番号は050始まりのみとなりますが、初期費用を抑えてクラウドPBXを導入したい企業にとって選択肢の一つとなるでしょう。
クラコールPBX|プランを幅広く検討したい人に
1人利用・1ヶ月〜契約可能なクラウドPBXです。
初期費用0円で月額料金は1ユーザー980円、6ユーザー目以降は基本料が無料となります。
また、課金プランには秒単位で課金されるプランもあるなど、利用条件に合わせて幅広くプランを選択できる事が特徴となります。
通話の音質などに不安がある場合は、30日間無料お試し期間も設けられているので安心です。幅広いプランから自社に合ったものを選びたい企業におすすめのクラウドPBXといえるでしょう
ケース2:30名規模のオフィス・店舗にクラウドPBXを導入する
費用項目 | 料金相場(30ユーザーで算出) |
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初期費用 | 4万円~8万円 別途、固定電話機購入時に約2-3万円/1台 これまでの電話番号を使う場合は別途ゲートウェイ導入等の初期費用が発生します |
月額費用 | 3万円~10万円 通話料は別途発生 |
従業員数30名規模のオフィス・店舗の場合、初期費用は4万円〜8万円が目安となります。
スマートフォン以外に固定電話を導入する際には、1台につき約2〜3万円の追加費用が必要です。
また、サービス利用のための月額費用は3万円〜10万円が相場で、通話料が別途発生します。
初期費用が大きく変動する要因として、ゲートウェイの設置が挙げられます。
これまで使ってきた電話番号をクラウドPBXに引き継いで利用したい場合は、別途ゲートウェイを導入しなくてはなりません。この場合、初期費用にゲートウェイの導入費用も含まれる点に注意してください。
ケース2におけるおすすめのクラウドPBX
MOT/TEL|月額費用を安く済ませたい人に
20内線までであれば3,980円と、月額費用が業界最安値級のクラウドPBXです。
低価格ながら通話の音質や安定性はしっかりと確保されており、官公庁をはじめ大手企業でも導入実績があります。
基本の初期費用は29,800円で、これまでの電話番号を利用する際には別途工事費やゲートウェイのレンタル料金がかかります。とくにランニングコストを抑えたい事業者におすすめのクラウドPBXといえるでしょう。
BIZTELビジネスフォン|フェーズに合わせて柔軟にプランを変えたい人に
内線番号数・同時通話数がプランによって細かく分かれており、自社にとって必要な分を無駄なく活躍しやすいクラウドPBXです。
料金を最も抑えたライトプランの場合、初期費用は50,000円、月額利用料は21,000円となります。
外線番号数を増やしたい場合は、1番号あたり初期費用500円・月額利用料300円で追加可能。事業のフェーズに合わせて柔軟にプランを変更していきたい人におすすめのクラウドPBXです。
トビラフォンCloud|オプション機能の拡張性を重視したい人に
オプション機能が充実しており、豊富な機能の中から自社に必要なものを選んで活用できるクラウドPBXです。
電話帳にはない事業者名をデータベースから取得して表示することや、自動音声ガイダンスをスケジューリングすることなどが可能。
月額利用料は初回1番号が7,700円、2番号目以降が2,200円。月額利用料は1外線番号550円、1内線番号1,100円。電話をより便利に使うために、オプション機能による拡張性を重視したい人におすすめです。
ケース3:80名規模のオフィスにクラウドPBXを導入する
費用項目 | 料金相場(80ユーザーで算出) |
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初期費用 | 6万円~30万円 別途、固定電話機購入時に約2-3万円/1台 これまでの電話番号を使う場合は別途ゲートウェイ導入等の初期費用が発生します |
月額費用 | 8万円~25万円 通話料は別途発生 |
従業員数80名以上の中〜大規模のオフィスでクラウドPBXを導入する場合、初期費用は6万円〜30万円が目安です。月額費用は8万円〜25万円のほか、通話料が別途発生します。
ユーザー数が多くなるほど初期費用・月額利用料ともに高額になっていくため、固定電話機を設置する場合の初期費用・月額費用(リース料など)と比較しておくことが大切です。
また、既存の電話機をクラウドPBXに入れ替える場合、これまで使っていた電話機や主装置の撤去費用も考慮する必要があります。
ケース3におけるおすすめのクラウドPBX
GoodLINE|電話業務を「見える化」したい人に
Webとの連携機能が充実しており、電話業務を「見える化」できるクラウドPBXです。
内線ごとの着信音を鳴らす・鳴らさない設定を、Web画面から自社で行うことができます。
また、着信時に顧客情報がポップアップ表示され、前回はいつ誰が対応したのかを表示することも可能。
社員の状況をモニタリングできる機能も備えているので、リモートワーク環境下でもスムーズに電話を取り次げます。60内線以上の初期費用は要見積、80内線利用時の月額料金は75,000円です。
Arcstar Smart PBX|多機能性と信頼性を重視する人に
NTTコミュニケーションズが提供するクラウドPBXです。
一つの内線番号が着信した際に複数の端末の着信音を鳴らし、一定時間経過後に留守番電話に切り替える機能や、複数の条件で設定可能な転送機能など、豊富な機能を備えています。
初期費用は10,000円〜、月額利用料は基本料が1契約5,000円、IDごとの利用料が500円です。多機能性と信頼性を重視してクラウドPBXを選びたい人におすすめです。
BIZTEL ビジネスフォン|導入事例・実績の豊富さを重視する人に
累計2,000社超の導入事例をもつ、実績豊富なクラウドPBXです。
小規模事業者から大企業まで導入実績があるので、中〜大規模オフィスでクラウドPBXの導入を検討している人も安心して利用できます。
内線番号数80本を想定したスタンダード30の場合、初期費用が30万円、月額利用料が8万円です。
同時通話数の追加もオプションで柔軟に対応できるため、自社に適した条件で電話を使いたい人におすすめのクラウドPBXといえるでしょう。
3)クラウドPBXの費用・料金を安く済ませるためのポイント3つ
まずは目的と今後の業務展開に合わせてサービスを選ぶこと
はじめに検討しておくべきことは、電話を使う目的と今後の事業展開です。
電話を使う目的を明確にすることで、現状必要な回線数や電話機の数、必須の機能などを整理しましょう。
クラウドPBXによってプランに含まれている機能や選べるオプションが異なります。
自社にとって必要な機能が備わっているか、求める機能をオプションで付加できるかによって、選ぶサービスを見極めるのもポイントです。
また、現状だけでなく将来的な事業展開も踏まえておくとよいでしょう。
今後、電話を利用する従業員が増えたり事業の拡大が見込まれたりする可能性があるようなら、回線数や契約ユーザー数を柔軟に調整できるサービスを選ぶ必要があります。
契約後にサービス内容が事業の実態に合わなくなってしまうことのないよう、中長期的な視点に立ってサービスを検討することが大切です。
複数社の見積もりを取っておく
クラウドPBXの費用・料金は、各サービス提供事業者の料金体系によって変動します。
Webサイトなどに掲載されているのはあくまでもプランの一例ですので、自社が契約した場合に初期費用・月額料金がいくらになるのか必ず見積もりを取って確認することが大切です。
見積もりは複数社に依頼し、各社の見積もりを比較検討することをおすすめします。見積書には初期費用と月額料金が記載されていますので、年間のコストに換算するといくらになるのか試算してください。
また、必要な機能が備わっているか、そしてそれが標準仕様なのか、別料金のオプションなのかを確認しておくことも重要です。
各社の見積もりを比較した結果、コストと機能のバランスが最も良いと思われるサービスを選びましょう。
固定電話機の料金を抑える(ソフトフォンの活用およびスマホの利用・料金プランの見直しをする)
クラウドPBXを契約する際、料金面で意外と負担になりやすいのが固定電話機の導入コストです。
固定電話機の購入は必要最小限の台数に抑えて、手持ちのスマートフォンでの利用をメインにするとよいでしょう。
またスマートフォンを新規に購入する必要がある場合は、法人向けの「格安スマホ」もおすすめです。
また、PCで利用するソフトフォンを活用するのも一つの方法です。
固定電話機を設置することなく既存のPCを活用できるため、導入コストの抑制に繋がります。
ただし、ソフトフォンを利用するにはヘッドセットやUSBフォンなどを別途用意する必要があるため、その周辺機器の購入も導入コストに含めて考えることが大切です。
それから、会社端末としてスマートフォンを利用している方は、料金プランの見直しをしておくことも大切です。
たとえば通話定額サービスを利用している場合、クラウドPBXでのスマホ通話は通話定額サービスとは別に通話料が発生します。
その際は料金プランを見直し、クラウドPBXを想定したプランに移行しておきましょう。
まとめ)クラウドPBXの導入は中長期的な運用を見据えた検討を!
クラウドPBXは主装置を設置することなく導入できることから、初期費用を抑えて導入しやすいのが大きなメリットです。
一方で、導入に際して価格面の安さだけに目を奪われることなく、将来的な運用を見据えて検討する必要があります。
今回紹介してきた初期費用・月額費用の相場を参考に、自社にとって最適なクラウドPBXを選びましょう。費用・料金の相場を踏まえてサービスを比較検討することで、より的確な判断を下しやすくなるはずです。